3. 実践!皮膚病理道場 2013 オーガナイザーからの総括(平成 25年 6月 安齋)

2013.06.20

過去の活動

「実践!皮膚病理道場2013」 テキストブックの内容の一部(左より、表紙、Level A、Level B、Level C)

 2013年6月15日(土)10:30より12:30まで、第112回日本皮膚科学会総会第6会場において、教育講演「皮膚病理へのいざない」に引き続き、今回初めての試みとして受講者参加型の皮膚病理教育講習会「実践!皮膚病理道場2013」が開催されました。

 このセッションでは、技術面では、バーチャルスライドデータをインストールした多数のPCを用い、各症例の病理診断のポイントを書いた配付資料に基づき、参加者に自分で標本を観察しながら各疾患の病理像を覚えてもらう、という方式を採用しました。教育対象が皮膚病理の初心者に絞られていましたので、日常診療で良く目にする、あるいは重要な疾患を取り上げることにしておりました。今回扱った疾患は、直前に行われた教育講演「皮膚病理へのいざない」の主題に沿ったかたちでの上皮性腫瘍でした。しかし、何しろ今回が初めての試みであり、提供する症例数をどのくらいにしたら良いのか、対象疾患をどの程度の範囲にしたら良いのか、すべて手探りの状態でした。また、事務局には多大なご負担をいただき、100台ものPCを準備していただきました。当初、どの程度の参加者があるか心配していましたが、前半の教育講演「皮膚病理へのいざない」が終わる頃には、PC席は満席となってしまい、何人かのベテランの先生には、「今後の日本の皮膚病理発展のため」という名目で、若手の先生に席を譲っていただいております。ご快諾下さった先生には、この場をお借りして感謝申し上げたいと思います。

 供覧した症例数は、37例/42枚でした。対象者のレベルが一定していないことを考え、症例を難易度により3段階に分け、それぞれLevel A(初心者レベル)、Level B(初心者レベルの応用編)、Level C(専門医試験受験準備レベル)とし、それぞれが自分に合ったレベルの症例から観察できるように配慮しました。

 各症例の病理診断のポイントは、症例提供者(佐賀大 三砂範幸先生、日本医大武蔵小杉 安齋眞一)が供覧した症例を元に作成した配付資料で確認しつつ観察してもらう方式としました。この配付資料も、事務局のご厚意で、立派なものが準備されました(上写真参照)。

 会場には、日本皮膚病理組織学会の理事を中心とした15名+若干名(当日ボランティアを買って出て下さった先生もおられました)のチューターが巡回し、参加者の疑問にお答えしました。気軽にどんな基本的なことでも聞いて下さい、という主旨で行いましたが、チューターの先生は皆さんとても優しく教えていただいたようです。ご協力いただいたチューターの方々にも、この場をお借りして深謝したいと思います。

 以上のようなかたちで、約2時間、参加者に存分に標本をみてもらいました。セッション終了後のアンケートでは、「標本が沢山みられて良かった」とか、「チューターの先生が優しく教えてくれた」いう声を多くいただきました。参加したほとんどの先生に満足いただけたものと思いました。

 ただ、もちろん問題点も多く指摘されました。そのほとんどが、「PCの台数が限られていること」「標本観察時間が限られていること」に起因するものと思われました。これらのことに関しては、来年の次期会頭からいつ何時委託されても良いように「実践!皮膚病理道場2014」に向けて解決策を練っている最中です。上記の問題点はほぼ解決できると思われますので、来年の日本皮膚科学会総会において「実践!皮膚病理道場2014」が実現した場合でも、どうかご期待下さいませ。

 とにかく、今回この様な本邦(もしかしたら世界でも)初の企画が実現したことは、日本の皮膚科及び皮膚病理の学界にとって、歴史的な出来事だと自負しております。また、皮膚病理の教育において、この方法が非常に有効であるという確信も得ることができました。今後もこの方式の教育により磨きをかけ、より良いものにしていこうと考えています。

  最後に、今回のエポックメイキングな企画を実現するにあたり、多大なご尽力をいただいた第112回日本皮膚科学会総会会頭川島眞教授、事務局長常深祐一郎先生に深謝いたします。また、川島教授とともにこの企画のご提案をして下さり、実現の端緒をお作りいただいた、本セッションの本当の意味でのオーガナイザー土田哲也教授にも、心から御礼を申し上げたいと思います。さらに、この企画には欠かせなかったバーチャルスライドデーターの作成と提供を無償で引き受けて下さった、NPO法人皮膚病理発展推進機構理事長木村鉄宣先生、事務局長定久恵子さんにも深い感謝の意を表したいと思います。    (文責 安齋眞一)

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