GLOSSARY 皮膚病理組織学用語
は
【はー】
ハーフデスモソームhalf desmosome → ヘミデスモソーム
【ばー】
バーベック顆粒Birbeck granule:電顕像。棍棒状あるいはテニスラケット状をした細胞小器官でランゲルハンス細胞を特徴づける。例:ランゲルハンス細胞組織球症の診断にはバーベック顆粒を証明することが必須。同義語:ランゲルハンス細胞顆粒。
【はい】
排泄(はいせつ)像casting off:色素性母斑、悪性黒色腫では大量のメラニン色素が角層に含まれる像をみることがある。分布が規則的に出現すれば良性を示唆する。被角血管腫では血栓を伴う血管が角層に認められることがある。パジェット病でも角層内に変性した腫瘍細胞が観察される。これらの所見を排泄像と考える。類義語:経表皮排除。
【ばい】
バイベル-パラーデ顆粒Weibel-Palade granule → ワイベル-パラーデ顆粒
【ぱざ】
バザン硬結性紅斑erythema induratum Bazin:小葉性脂肪織炎の一つ。皮下脂肪織に肉芽腫が形成され、リンパ球浸潤を伴う血管炎がある。原因は不定だが結核アレルギーに基づく皮膚病変が含まれる。非結核性の場合に結節性血管炎nodular vasculitisとして区別する考えがある。
【ぱじ】
パジェトイド・メラノサイトpagetoid melanocyte:表皮内にあって基底細胞層から上層に明るい大型のメラノサイトが個々浮かぶように観察される様をいう。例:悪性黒色腫。類義語:個別メラノサイトの増殖。
【ぱじ】
パジェット細胞Paget cell:表皮内にある大型の明るい胞体をもつ腺組織由来の腫瘍細胞。胞体内腺腔をもつことがある。例:パジェット病、乳房外パジェット病。関連語:パジェット様細胞。
【ぱじ】
パジェット現象pagetoid phenomenon:表皮内でパジェット細胞に似た大型の明るい胞体をもつ腫瘍細胞が個別にあるいは小胞巣をつくって存在する現象。パジェット病、乳房外パジェット病を除いた腫瘍の表皮内浸潤に適用。例:悪性黒色腫、悪性リンパ腫、エクリン汗腺癌、脂腺癌などでの表皮内浸潤。類義語:パジェット様現象、表皮向性癌。
【ぱす】
パス染色 → ピーエーエス(PAS)染色
【はつ】
発芽tumor buds:蕾のようにあるいは発芽するように表皮の基底層に腫瘍細胞巣が観察される腫瘍がある。胎生期の原始的上皮芽に似て腫瘍胞巣が表皮基底細胞層の真皮側に小胞巣をつくり、真皮に突出するように見える様。例:エクリン汗孔腫、表在型基底細胞上皮腫。同義語:蕾状胞巣。
【はな】
花むしろ状storiform pattern:膠原線維と紡錘形の細胞が流れをつくり複雑に交錯する様。一方向への流れとは異なり、種々の方向を向くが、なおかつ、一定の方向性を見て取ることのできる配列。唐草模様であったり車軸状であったりする。例:皮膚線維腫、隆起性皮膚線維肉腫。類義語:車軸状。対比語:錯綜。
【ぱら】
パラフィンparaffin:光学顕微鏡での観察標本はホルマリンで固定した後、脱水し、パラフィンに包埋embeddingする。パラフィンに包埋してあれば常温で何年でも保存することができる。
【ぱら】
パラフィノーマparaffinoma:豊胸術などの目的で注入された流動パラフィンが融解し慢性炎症をおこし、さらにパラフィンを異物として異物肉芽腫を形成する。同義語:パラフィン腫。
【はん】
瘢痕scar:創傷治癒の過程で肉芽組織を生じ、線維化が進んだ状態。表層は附属器を欠如する上皮が覆っている。線維芽細胞の増殖と膠原線維の増生がある。しばしば膠原線維はヒアリン化する。腫瘍切除後の再切除標本であることの判断の指標とする。関連語:ケロイド。
ひ
【ぴー】
ピーエーエス染色periodic acid-Schiff stain(PAS stain):染色法の一つ。多糖類が過ヨウ素酸シッフ反応陽性となり、赤紫色に染色される。基底膜、グリコーゲン、真菌などの検出に有用。アミラーゼ(ジアスターゼ)で前処理するとグリコーゲンは染色性を失うが、真菌、基底膜は抵抗性である。この鑑別法をアミラーゼ(ジアスターゼ)消化試験という。同義語:パス染色。
【ひあ】
ヒアリンhyalin:PAS染色陽性で、アミラーゼ(ジアスターゼ)抵抗性の均質物質。電顕像ではアミロイドよりもさらに細かな細線維ないしは無構造物質。既存の組織が変化して無構造な物質に変化したときヒアリン化とよぶ。ポルフィリン症、皮膚粘膜ヒアリノーシスなどでは真皮内のとくに血管周囲にヒアリンが沈着する。類義語:コロイド。
【ひあ】
ヒアリン化(硝子化):膠原線維が融合し、均質に好酸性に染まる所見はヒアリン化(硝子化)という。例:ケロイド、放射線皮膚炎、硬化性萎縮性苔癬。
【ひあ】
ヒアルロニダーゼhyaluronidase → ムチン
【ひか】
皮下脂肪織炎panniculitis → 脂肪織炎
【ひか】
皮下脂肪組織subcutaneous fatty tissue:皮下組織にある脂肪組織。
【ひか】
皮下組織subcutaneous tissue:真皮と筋膜などの深部にある構造物との間を結ぶ疎性結合組織。皮下脂肪組織が発達し、皮下血管叢subcutaneous vascular plexus、神経組織がある。
【ひか】
非感染性肉芽腫non-infective granuloma:異物肉芽腫、サルコイドーシスなどの肉芽腫。対比語:感染性肉芽腫。
【ひこ】
肥厚acanthosis → 表皮肥厚
【びじ】
微絨毛(びじゅうもう)microvilli:電顕像。細胞表面、とくに腺腔、管腔に面して細長く突出する棒状突起。中心にアクチンがある。
【びし】
微小膿瘍microabscess:角層内のムンロー微小膿瘍、マルピギー層に生じるポートリエ微小膿瘍、ジューリング疱疹状皮膚炎のときに観察される真皮乳頭部の多核白血球の小集塊、ケラトアカントーマに出現する好中球を主体とする微小膿瘍などがある。偽癌性増殖の表皮突起内にも微小膿瘍が観察されることが多い。
【ひふ】
皮膚転移cutaneous metastasis → 転移
【ひふ】
皮膚転移癌metastatic carcinoma of the skin、metastatic skin cancer → 転移
【ひふ】
皮膚附属器腫瘍appendage tumor of the skin:胎生期の原始的上皮芽から発生する毛包、脂腺、アポクリン汗腺に似る腫瘍とエクリン汗腺芽から発生するエクリン汗腺の組織構築に類似するエクリン汗腺腫瘍とを区別する。器官形成の明瞭な過誤腫・母斑と、器官形成の乏しい腺腫・良性上皮腫、さらに器官形成を失った未熟細胞の集団である基底細胞上皮腫とを区別する。基底細胞上皮腫では組織構築が失われどの器官への分化かは不明になっているが、構成する細胞は角化細胞、色素細胞、線維芽細胞などを揃えている。
【ひま】
被膜capsule:線維性物質で包まれている場合、その胞巣は被膜を有するencapsulatedという。(1)良性腫瘍では腫瘍間質の膠原線維と正常真皮の膠原線維とが染色性の違い、線維束の走行の違いから境界が明瞭となるため被膜をもっているようにみえることがある。腫瘍によっては裂隙をつくることもある。(2)悪性腫瘍では増殖した腫瘍細胞巣が周囲を圧排して被膜に包まれたかのようにみえる。(3)なお神経鞘腫では本来の被膜である神経外膜が腫瘍の被膜をつくる。関連語:裂隙。
【ひま】
肥満細胞mast cell:肥満細胞顆粒はトルイジン・ブルー染色で赤紫色に染まり異染性を示すという。例:色素性蕁麻疹。同義語:マスト細胞。
【びめ】
ビメンチンvimentin → 中間径フィラメント
【ひょ】
表皮萎縮atrophy:マルピギー層の萎縮。表皮突起が短くなり、表皮全体が扁平となる。細胞数も減少する。例:慢性円盤状エリテマトーデス、硬化性萎縮性苔癬。
【ひょ】
表皮襟(えり)epidermal collarette:腫瘍辺縁の表皮突起が延長して表皮内あるいは真皮内の腫瘍胞巣を包むようにみえる。例:光沢苔癬、アミロイド苔癬、脂漏性角化症、血管拡張性肉芽腫(化膿性肉芽腫)、老人性血管腫、被角血管腫、黄色肉芽腫、外毛根鞘腫、転移性皮膚癌。同義語:上皮襟。
【ひょ】
表皮下水疱subepidermal bulla:表皮下水疱は厳密には、(1)基底細胞の変性による水疱、(2)表皮細胞と基底板の間での裂隙、(3)基底板直下の係留線維の欠損、(4)真皮内での高度の浮腫による裂隙ないしは水疱に分けられる。対比語:表皮内水疱。
【ひょ】
表皮向性epidermotropism:菌状息肉症で異型リンパ球が表皮基底面に集まり、一部は表皮内に浸潤する。ランゲルハンス細胞組織球症では抗S-100蛋白抗体、抗CD1a抗体に陽性で、ランゲルハンス細胞の性質を持つ細胞が表皮内に浸潤する。同義語:表皮親和性。対比語:炎症でのリンパ球の表皮内浸潤exocytosis。
【ひょ】
表皮向性癌epidermotropic carcinoma :乳癌、肺癌の皮膚転移では真皮から表皮を経由して角層を貫くように腫瘍細胞巣が浸潤し、表皮内胞巣をつくり、経表皮排除されることがあり、表皮向性癌という。パジェット細胞を除く腫瘍細胞の表皮内浸潤に使われる。
【ひょ】
表皮細胞間浮腫intercellular edema → 海綿状態
【ひょ】
表皮真皮境界部dermo-epidermal junction:表皮と真皮の境界部、基底膜付近では種々の病変が観察される。表皮細胞の変化による液状変性、鋸歯状変化、基底膜の肥厚、組織学的色素失調や表皮下水疱などの有無が重要な所見である。
【ひょ】
表皮突起rete ridge:表皮突起の病理所見としては、不規則な表皮突起の延長、規則的な表皮突起の延長、乳頭腫症の有無、表皮突起の消失、鋸歯状変化、表皮突起の先端が病巣中心に向かう集中像arborizationなどを観察する。
【ひょ】
表皮内汗管acrosyringium:エクリン汗腺の表皮内導管。導管ではあるがケラトヒアリン顆粒が出現し角化する。汗管腫でも類似の角化とケラトヒアリン顆粒が出現する。
【ひょ】
表皮内癌in situ carcinoma、carcinoma in situ:概念。表皮内胞巣を構成する細胞が癌細胞である。別の表現をすれば、癌細胞が表皮内に留まっている状態。表皮全体が癌細胞に置き換っている場合も含む。注意するべきことは、病変の一部に浸潤癌の像があれば、たとえ表皮内にとどまる病巣が広範囲に存在しても表皮内癌とよぶべきではない。一部にでも浸潤像がある場合はその腫瘍は浸潤癌であると診断する。例:ボーエン病、日光角化症、砒素角化症、悪性黒子。対比語:浸潤癌。
【ひょ】
表皮内上皮腫intraepidermal epithelioma of Jadassohn:概念。基底細胞に似た好塩基性を示す均一な小型細胞の表皮内胞巣。例:脂漏性角化症の一亜型であるclonal type、エクリン汗孔腫の一亜型である単純性汗腺棘細胞腫hidroacanthoma simplexなどが本態。良性腫瘍を念頭においているが、診断を特定できないとき仮に呼ぶ。胞巣を構成する細胞が癌細胞の場合は表皮内癌という。
【ひょ】
表皮内浸潤exocytosis:表皮を炎症の場とした病変で、リンパ球の表皮内浸潤が高度になると細胞間浮腫を生じ、海綿状態を呈し、海綿状水疱をつくる。例:接触皮膚炎、アトピー性皮膚炎。同義語:表皮内リンパ球浸潤、表皮内細胞浸潤。表皮内細胞侵入。対比語:表皮向性、表皮親和性。
【ひょ】
表皮内水疱intraepidermal bulla:表皮内にできる水疱で、海綿状水疱、棘融解性水疱を指す。注意したいことは、表皮下水疱が表皮内水疱に見える場合が有ることである。水疱が形成されてから時間が経つと、再生した基底細胞が表皮下水疱の水疱下に伸びていき、水疱を経表皮的に排泄する。その際にはあたかも表皮内水疱であるかのようにみえる。対比語:表皮下水疱。
【ひょ】
表皮内胞巣:概念。表皮内に周囲とは異なる性質の細胞集塊が観察されることがある。パジェット現象、表皮向性癌、表皮内上皮腫、表皮内癌、Borst-Jadassohn腫瘍などと呼ばれる。色素性母斑では母斑細胞が表皮内胞巣をつくる。これらの名称は診断の糸口であり、浸潤細胞の性質を明らかにして、該当する診断を下す。類義語:表皮内腫瘍。
【ひょ】
表皮肥厚acanthosis:マルピギー層が通常の2倍程度以上に肥厚する状態。炎症に伴う場合、腫瘍性に増殖する場合、腫瘍胞巣に隣接する表皮での反応性肥厚性変化などを区別する。ただし、黒色表皮腫では乳頭腫症は著明であるが表皮肥厚は通常みられない。菌状息肉症では乾癬様の表皮肥厚がある。表皮肥厚と偽癌性増殖との間に明確な線は引けない。腺腫瘍性病変ではボーエン病、疣贅、棘細胞腫で表皮肥厚があるという。しかし、有棘細胞癌では表皮肥厚とは呼ばず癌性増殖という。真皮内腫瘍に随伴する二次的表皮肥厚として、被角血管腫、顆粒細胞腫瘍(顆粒性筋芽細胞腫)、皮膚線維腫、あるいは汗管腫などの皮膚附属器腫瘍で被覆表皮がしばしば二次的に肥厚する。高度の場合には基底細胞上皮腫に類した構造を観察することがある。例:アレルギー性接触皮膚炎、アトピー性皮膚炎、乾癬。
【ひょ】
表皮融解性過角化epidermolytic hyperkeratosis → 顆粒変性
【びり】
ビリvilli:棘融解による水疱形成部に出現する所見。基底細胞が細く索状に真皮側に向かって増殖する様。例:ダリエー病、家族性慢性良性天疱瘡(ヘイリー・ヘイリー病)。対比語:微絨毛microvilli。
ふ
【ふぃ】
フィブリノイド変性fibrinoid degeneration:(1)血管内腔、血管壁にフィブリン(類線維素)、細胞残渣が沈着することを血管のフィブリノイド変性という。(2)リウマチ結節での膠原線維の変性壊死もフィブリノイド変性という。関連語:類壊死。
【ふぃ】
フィブリンfibrin:壊死性血管炎では赤血球の漏出、フィブリンの析出がおこり、血管内腔、血管壁に沈着する。フィブリノイド変性の主体は電顕でみるとフィブリンであり、微細な線維で細かな縞模様がある。同義語:類線維素。
【ふう】
封入体inclusion body:核内あるいは胞体内に病原体、異物などが封印されて生じる特異な構造。例:ヘルペス感染症、疣贄。ただし、封入体は小児指線維腫症でのマイクロフィラメントの集塊のように細胞自身が産生する物質の過剰沈着のことがある。シャウマン小体、マンソン幼裂頭条虫症の石灰小体は石灰沈着である。関連語:核内封入体。
【ふぇ】
フェネストレーションfenestration:(1)成年性浮腫性硬化症、粘液水腫では膠原線維間にムチンが沈着し、HE染色標本では空隙として見え、フェネストレーションという。(2)エクリン汗腺や乾癬の毛細血管には小孔fenestrationがあり有窓血管という。
【ふぇ】
フェリチンferritin → ヘモジデリン
【ふぉ】
フォン・コッサ染色von Kossa stain:染色法の一つ。石灰沈着症での石灰(カルシウム塩)の証明法。カルシウムを間接的に染色し、黒染する。例:マンソン幼裂頭条虫症の石灰小体。同義語:コッサ染色。
【ふぉ】
フォンタナ・マッソン染色Fontana-Masson stain:鍍銀染色法。メラニン色素の分布、量を確認することができる。メラニンは黒く染まる。
【ふき】
不規則な表皮突起の延長irregular elongation of rete ridges:表皮突起の延長はあるが、突起ごとに長さが異なり、下縁が不揃い。例:結節性痒疹、アトピー性皮膚炎。対比語:規則的な表皮突起の延長。
【ふし】
浮腫edema:真皮乳頭部の高度の浮腫は表皮下水疱を生じる。例:多形滲出性紅斑、Stevens-Johnson症候群。
【ふぜ】
不全角化parakeratosis:角質細胞の核が濃縮し扁平化した状態で残存する角化。顆粒層は消失する。部分的に不全角化がある場合はfocal parakeratosisという。腫瘍性病変では広汎に不全角化を示すことがある。広範な不全角化の例:尋常性乾癬、日光角化症、ボーエン病。部分的不全角化の例:Gibert薔薇色粃糠疹、接触皮膚炎、慢性苔癬状粃糠疹。同義語:錯角化 。類縁語:異常角化。対比語:正角化。
【ぶぞ】
附属器腫瘍 → 皮膚附属器腫瘍
【ふぞ】
附属器との連絡:腫瘍組織と皮膚附属器との関係のあり方を知ることは腫瘍細胞の分化方向ないしは発生を知る上で重要である。多くの附属器腫瘍では発生母地となった附属器と緊密な連絡がある。例:基底細胞上皮腫では表皮、毛包から発芽するような胞巣をつくる。アポクリン汗腺腫瘍では毛包との連続性はあるが、表皮とは連絡しない。エクリン汗腺腫瘍では表皮と連続する胞巣をつくる。
【ふぞ】
附属器の萎縮atrophy:強皮症では毛包、脂腺、汗腺などの附属器が萎縮ないしは消失し、硬化した膠原線維に置き換わる。
【ふぞ】
附属器の温存:日光角化症では毛包あるいは表皮内汗管が正常のまま温存され傘のように病変の表層を覆う。umbrella like spreading of adnexal keratinocytesという。
【ふぞ】
附属器への浸潤:先天性色素性母斑では附属器周囲に母斑細胞が集積し、ときに上皮内胞巣を形成する。乳房外パジェット病ではパジェット細胞が好んで毛包、エクリン汗腺を浸潤する。例:悪性黒色腫、悪性リンパ腫(毛包性ムチン沈着症)。
【ぶぶ】
部分的不全角化focal parakeratosis → 不全角化
【ぷら】
プラズマ細胞plasma cell → 形質細胞
【ぷら】
プランプ・エンドテリアル・セルplump endothelial cell:好酸球性血管リンパ球増殖症angiolymphoid hyperplasia with eosinophiliaで増殖する血管内皮細胞の性状。血管内皮細胞の腫大した胞体が血管腔に向かって凸状に迫り出す特徴をいう。カポジ肉腫、血管肉腫の内皮細胞も類似所見を示すが、より高度で、より不規則である。同義語:血管内皮細胞の腫大。
【ふる】
篩状(ふるいじょう)構造cribriform pattern → 腺様
【ぷる】
プルシアン・ブルー染色Prussian blue stain → ベルリン・ブルー染色
【ふれ】
フレーム・フィギアflame figure:真皮内で好酸球浸潤が高度にあり、脱顆粒した多数の好酸球顆粒が間質の膠原線維、弾性線維に付着して炎のようにみえる様。例:虫刺症、ウェルズWells症候群、好酸球増多症候群、薬疹。
【ぶれ】
ブレスローの厚みBreslow’s thickness:悪性黒色腫の腫瘍病巣の厚みを計測する方法。顆粒細胞層から腫瘍胞巣の最深部までの実測値で表現する。生理的なバリアーを重視したクラークのレベル分類と併用し予後判定に役立てる。基底膜内にとどまる表皮内癌であるか、基底膜を破って真皮に浸潤する浸潤癌であるかの違いよりも腫瘍の厚みが予後判定には重要であるとする考え。
【ぷれ】
プレメラノソームpremelanosome:電顕像。メラノサイトに含まれる未熟なメラノソーム(stage I~III)のこと。白皮症では色素細胞はあるがメラニン色素の形成が未熟な段階に留まっている例が多い。一方、メラノソームの産生能力を裏付ける所見でもあり、悪性黒色腫では色素産生腫瘍であることを証明するのに異型プレメラノソームの存在を探す。
【ぶん】
分化differentiation:概念。腫瘍細胞の分化の方向は腫瘍ごとに一定である。一方、形質発現の程度(分化度)は腫瘍により症例により異なる。良性腫瘍は分化の良いもの悪いものいずれもあるが、腫瘍によりそれぞれ分化度が一定である。一方、細胞ごとに形質発現が異なる点が癌細胞の分化の特徴である。胞体内にトノフィラメントが存在し、デスモソームをもつという意味で分化方向は角化であり、有棘細胞癌の診断を下すべき腫瘍ではあっても、癌真珠をつくる場合、個細胞角化を示す場合など形質発現には多様性がある。一定の規則性を見い出すことのできないことが癌細胞の癌細胞たる由縁である。またこの多様性の故に癌の診断はむずかしい。良性腫瘍と悪性腫瘍の鑑別は分化が良いか悪いかではない。
【ぶん】
分界膜demarcation membrane:電顕像。断頭分泌の形成機序。アポクリン汗腺の腺腔面に腺細胞の胞体が突出し、その根元に分界膜が形成される。その後、離断して細胞質ともども突起全体が管腔内に脱落する。
【ぶん】
分析電子顕微鏡analytical electron microscope:電子顕微鏡にX線微小分析装置を組み合わせた装置。細胞レベルで金属の同定が可能。
へ
【へい】
平滑筋細胞smooth muscle cell:筋細線維(デスミン)を含む細胞ではあるが、横紋筋細胞とは異なり横紋がない。代わりに暗調な領域、暗調小体dense bodyがある。
【へま】
ヘマトキシリン・エオシン染色hematoxylin-eosin stain:組織標本を光学顕微鏡で観察するために施されるもっとも基本となる染色法。細胞の核は好塩基性でヘマトキシリンによって青染する。胞体は好酸性でエオシンによって淡くピンク色に染まる。同義語:HE染色。
【へみ】
ヘミデスモソームhemidesmosome:電顕像。基底細胞の真皮に接した細胞膜にある接着装置。形態がデスモソームの半分のようにみえるが、まったくの片割れではない。同義語:ハーフデスモソーム。対比語:デスモソーム。
【へも】
ヘモジデリンhemosiderin:赤血球由来の色素でマクロファージなどに貪食されている。HE染色標本では同じ褐色顆粒として見えるメラニン色素との鑑別がむずかしい。ヘモジデリンはベルリン・ブルー染色で青色に染まるがメラニン色素は陰性。電顕では電子密度の高い小顆粒(フェリチン)がファゴソームに含まれたジデロファージ、ジデロソームとして観察される。例:ヘモクロマトーシス。同義語:血鉄素。
【へり】
ヘリングボーン・パターンherring-bone pattern:線維肉腫の紡錘形腫瘍細胞が密に平行に走る様子が松葉のように、あるいは矢羽根に似る走行をさす。地形図で深山の急峻な渓谷を見るような像。ニシンの骨になぞった表現。同義語:杉綾模様。
【べる】
ベルリン・ブルー染色Berlin blue stain:染色法の一つ。HE染色標本では同じ褐色顆粒として見えるメラニン色素とヘモジデリンとの鑑別に役立つ。鉄を含むヘモジデリンはフェロシアン化鉄を形成し、青色に染まるが、一方のメラニン色素は陰性。同義語:プルシアン・ブルー染色。
【べろ】
ベロケイ小体Verocay body:神経鞘腫で典型像をみる。紡錘形細胞の核が並列に並ぶことで生じる模様ないしはそのくり返しによって生じる特異な構造。胞体の部分は明るく無構造にみえるため、数個の並列する核が何段かになって配列すると、核の部分が一定の間隔をおいて縞模様をつくる。例:神経鞘腫。類義語:柵状配列。
【へん】
偏光顕微鏡polarizing microscope:複屈折birefringenceによる光輝性を利用して金属類の異物や結晶様構造をつくる沈着物の存在部位を調べる。代表的な使用例はHE染色標本では淡い好酸性無構造物質であるアミロイドを証明するために、アルカリ・コンゴ・レッド染色を施し、赤橙色を確認した後、偏光顕微鏡で黄緑色の光輝性を証明する方法がある。他にシリカなどの金属類の検出法としても有用であるが、膠原線維、ケラチンなどのような生体内物質も複屈折を示す。例:シリカ肉芽腫。アミロイド症。痛風結節。
ほ
【ぽー】
ポートリエ微小膿瘍Pautrier’s microabscess :マルピギー層に浸潤した異型Tリンパ球の小集塊。ランゲルハンス細胞と異型リンパ球が一緒に小膿瘍を形成する。例:菌状息肉症、成人T細胞リンパ腫。その他薬疹などの非腫瘍性病変でも類似の構造が出現する。その場合はリンパ球に異型性はない。ランゲルハンス細胞組織球症でも類似構造ができる。対比語:リンパ球の表皮内浸潤exocytosis。
【ほう】
胞子spore → 菌要素
【ほう】
紡錘形(ぼうすいけい)細胞spindle cell → 線維芽細胞様細胞
【ほう】
胞巣nest:胞巣があれば上皮性腫瘍のことが多い。上皮細胞は細胞が集まり組織を形成して特定の機能を担うため、腫瘍においても細胞集塊である胞巣を形成する。一方、肉腫では個々の細胞が線維性成分で分けられており胞巣はつくらない。しかし、類上皮肉腫、明細胞肉腫などでは胞巣を形成する。一般に胞巣の形態は不定で組織分化の方向を特定することはできない。
【ほう】
胞体内管腔intracytoplasmic ductal lumina → 細胞内管腔
【ほう】
泡沫(ほうまつ)細胞foam cell :脂肪を貪食したマクロファ-ジ。黄色腫を構成する泡沫細胞は血管周囲性に集塊をつくる。ハンセン病に出現する泡沫細胞はlepra cellという。コレステリンcholesterin結晶は紡錘形ないしは針状に抜けてみえ泡沫細胞とは異なる。例:皮膚線維腫(組織球腫)、若年性黄色肉芽腫、悪性線維性組織球腫、ランゲルハンス細胞組織球症。類義語:黄色腫細胞。
【ぼせ】
墓石状(ぼせきじょう)配列row of tombstones:尋常性天疱瘡では基底細胞直上で棘融解性水疱を生じる。基底細胞は墓石状に配列する。関連語:棘融解。
【ほそ】
捕捉像(ほそく)entrapment of collagen:皮膚線維腫の周辺部でみられる所見。紡錘形腫瘍細胞と微細な新生膠原線維に包まれて正常組織の残存である太い膠原線維が囲まれたように存在する像。
【ぼで】
ボディアン染色Bodian’s stain:染色法の一つ。鍍銀染色法で神経細線維(軸索)を黒色に染色する。
【ぼは】
母斑nevus:概念。限局性の先天奇形。多臓器に病変をつくる場合は母斑症。出生時に病変が存在することが多いが、遅発性のこともある。
【ぼは】
母斑細胞nevus cell :先天奇形を構成する細胞のすべては、定義上は母斑細胞である。しかし、通常は色素性母斑を構成する色素産生細胞に限定して使用する。樹状細胞である表皮のメラノサイトとは異なり類円形。関連語:真皮メラノサイト。
【ぼは】
母斑細胞の小型化maturation:色素性母斑の真皮内胞巣では深部ほど細胞が小型になる。マチュレーションとよび良性腫瘍と判断する根拠とする。胞巣そのものも小型化する傾向がある。
【ほる】
ホルマリンformalin:基本となる組織固定液。皮膚組織を光学顕微鏡で観察するときに使用する。