【あく】

悪性腫瘍malignant neoplasms of skin:悪性腫瘍は一般に大きく、表皮が欠損し、潰瘍を形成する。腫瘍胞巣には壊死がある。腫瘍塊は周囲を圧排、破壊しながら浸潤する。病理像にもその特徴は反映される。加えて、血管、リンパ管への浸潤、神経に沿った浸潤がある。また腫瘍細胞は発生母地となった組織構築を示すことは少なく、腫瘍細胞の示す分化の程度は不定である。ただし、分化方向は一定している。悪性腫瘍は異型性があると表現するが、具体的には細胞の極性の消失、細胞核のクロマチンの異常凝集、分裂細胞の形態異常、分裂細胞の数の増加などを意味する。また組織のレベル、細胞のレベル、電顕による細胞小器官のレベルでも異常所見がある。上皮性の癌腫と、非上皮性腫瘍である肉腫とを区別する。細胞の性質(分化/形質発現)によって有棘細胞癌、悪性黒色腫、血管肉腫、(隆起性皮膚)線維肉腫、悪性リンパ腫などを区別する。なお良性腫瘍との中間的な性質(局所浸潤)を示す病変には、胎生期の原始的上皮芽の過誤腫とされる基底細胞上皮腫(癌)がある。局所を破壊し浸潤するが、転移は稀である。対比語:良性腫瘍。

【あく】

アクチンactin → マイクロフィラメント

【あく】

悪性度:原発腫瘍(tumor)の大きさ、リンパ節(lymph node)への転移の有無、遠隔部位への転移病巣(metastasis)をTNMで表わすことで悪性度を表現する。

【あざ】

アザン・マロリー染色azan Mallory stain:染色法の一つ。膠原線維は青染する。

【あぽ】

アポトーシスapoptosis:プログラム細胞死とも呼ばれ、細胞の収縮、核の濃縮、クロマチンの凝集などを特徴とする細胞の積極的な死と定義さていれる。しかし、光顕のレベルでは壊死(ネクローシスnecrosis)との形態的な違いを明確にすることはできない。類似形態があるから即プログラム細胞死と断定することは早計である。病理組織診断ではアポトーシスの用語は用いず、単に個細胞壊死、あるいは壊死との所見を記載するようにしたい。プログラム細胞死であるかどうかは種々の手段を講じた上で判断されるべきである。同義語:アポプトーシス。対比語:壊死。

【あみ】

アミラーゼ(ジアスターゼ)amylase → ピーエーエス(PAS)染色

【あみ】

アミロイドamyloid:HE染色標本では淡い好酸性無構造物質。アルカリ・コンゴ・レッド染色で赤橙色に染色され、偏光顕微鏡で観察すると青緑色を呈する。電顕では10nm径の直線状の細線維で線維性蛋白である。10μm程度の集塊であるアミロイド島として観察される。例:透析アミロイドーシスはβ2ミクログロブリン由来、全身性アミロイドーシスでは免疫グロブリンL鎖由来、続発性アミロイドーシスでは血清アミロイドA蛋白由来、皮膚限局性アミロイドーシスでは表皮細胞線維成分由来とされる。上皮系腫瘍に沈着するアミロイドは脂漏性角化症、基底細胞上皮腫、ボーエン病、日光角化症などの間質に陽性となる。関連語:シバット小体

【あみ】

アミロイド島amyloid island → アミロイド

【あみ】

網目状 → レース状

【ある】

アルカリ・コンゴ・レッド染色alkaline Congo red stain → アミロイド

【ある】

アルシャン・ブルーalcian blue stain → ムチン

【あん】

アンカリング・フイブリルanchoring fibril → 係留線維

【あん】

アンカリング・フイラメントanchoring filament → 係留細線維

【あん】

暗視野顕微鏡dark field examination:光学顕微鏡の観察手段の一つ。梅毒のスピロヘータの観察、銀皮症の診断に役立つ。

【あん】

暗調細胞dark cell → 粘液細胞

【あん】

暗調小体dense body → 筋フィラメント

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【いけ】

異型細胞anaplastic cells:異型性を示す細胞。癌細胞と同義。

【いけ】

異型性anaplasia:概念。細胞異型は核異型、細胞核の極性の乱れないしは細胞の配列異常、異常核分裂像、腫瘍細胞の形質発現の異常すなわち個々の細胞の分化の程度に異常があるかどうかを総合して判断する。どのような所見があるから異型ということではなく、本来のあるべき形態との隔たりが重要性をもつ。関連語:多形性

【いこ】

移行細胞transitional cell:電顕像:尋常性乾癬、魚鱗癬などの角化異常のあるとき、有棘細胞、顆粒細胞が角質細胞に変化する直前に胞体が扁平となり核が線状に残る角化途中の細胞が出現する。

【いし】

石垣様細胞muriform cell:黒色分芽菌症での組織内菌要素は褐色で厚い隔壁がいくつかあり石垣様の形態を特徴とする。関連語:硬化細胞

【いし】

萎縮atrophy → 表皮萎縮附属器の萎縮

【いじ】

異常核分裂像atypical mitotic figure:核分裂像に異常があるという場合は(1)正常では観察されることのない部位に分裂細胞が存在する。(2)細胞分裂が高倍率(200~400倍程度)での観察で、一視野の中に複数個あるいはそれ以上に存在する。(3)分裂像そのものに大小不同、三極分裂像、環状分裂像のような形態異常があることをいう。

【いじ】

異常角化dyskeratosis:角化の異常をいう。(1)表皮内であるいは胞巣内で角化細胞が個別に角化すると異常角化細胞があるという。(2)生理的な範囲を超えた角質肥厚は過角化(角質増殖)があるという。(3)角質細胞に核が遺残すると不全角化(錯角化)という。例:魚鱗癬、尋常性乾癬、日光角化症、ボーエン病。類義語:不全角化。個細胞角化、個角化。対比語:個細胞壊死、シバット小体

【いじ】

異常角化細胞dyskeratotic cell:家族性良性慢性天疱瘡(ヘイリー・ヘイリー病)、ダリエー病などの先天性疾患、上皮系腫瘍に出現する細胞で、大量の張原線維が核を取り囲むように配列する像がある。ボーエン病、有棘細胞癌に出現する個別に分布する異常角化細胞は個(細胞)角化という。好酸性を示す10~20μm程度の大きさの小塊である。

【いせ】

異染性(いせんせい)metachromasia:本来の色素の示す染色性とは異なる発色のある場合をいう。例:肥満細胞の顆粒はトルイジン・ブルー法では赤紫色に染まる。同義語:メタクロマジア。

【いぶ】

異物巨細胞foreign body giant cell:異物を貪食した巨細胞。胞体内の異物を確認するためPAS反応で真菌要素を、偏光顕微鏡で金属、尿酸などの示す複屈折を確認する。同義語:異物型巨細胞。関連語:多核巨細胞。多核細胞。

【いぶ】

異物肉芽腫foreign body granuloma:異物を中心にリンパ球、白血球などに加え、類上皮細胞が集まり肉芽腫をつくる。異物巨細胞が多数出現する。縫合糸などの外来異物による肉芽腫、シリカ肉芽腫、類表皮嚢腫が破れた場合のように角質に対する肉芽腫がある。切片作成時の標本上の傷(チャター)があれば金属の存在を示唆する。偏光顕微鏡での複屈折、暗視野顕微鏡での光輝性、特殊染色法、分析電子顕微鏡などを駆使して異物を同定する。電顕像で外来異物の沈着は顆粒状、膜状物質として見え、表皮・真皮境界部の基底板、血管内皮細胞の基底板、弾性線維周囲、周皮細胞内、汗腺分泌部などに広く分布する。例:アミロイド沈着症、痛風結節、金皮症、銀皮症、鉄沈着、シリカ肉芽腫。

【いん】

陰影細胞shadow cell:毛母腫を構成する好塩基細胞は胞巣中心ないしは胞巣の片側で明るい細胞に分化する。核質は抜けて空隙になり、胞体は好酸性に染色され、石灰沈着、骨化をみることがある。

【いん】

印環(いんかん)細胞signet ring cell:細胞の胞体内にムチンを満たし、核は三日月状に細胞膜近くに押しやられ印環に似る細胞。例:汗腺癌、転移性腺癌。同義語:ゴブレットgoblet細胞(胚細胞)。関連語:パジェット細胞

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【うい】

ウイルス性巨細胞viral giant cell:水疱内に出現するヘルペスウイルスによる巨細胞。この細胞を証明することは臨床の場ではTzanckテストとして重用されている。

【うい】

ウイルス性水疱viral bulla:表皮内、表皮下にまたがる網状変性による水疱。球状変性、巨細胞、封入体が出現する。例:水痘/帯状疱疹。単純疱疹。

【うい】

ウイルス性封入体viral inclusion body:核内で多数のウイルス粒子が結晶様構造をつくると光顕レベルでも封入体として観察できる。一方、伝染性軟属腫のような大型ウイルスも細胞質内に封入体として観察できる。例:ヒト乳頭腫ウイルスによる疣贅、ヘルペスウイルスによる水痘/帯状疱疹、単純性疱疹。

【うず】

渦形成squamous eddy:有棘細胞様の腫瘍細胞が渦巻き状となり、中心は角化を示唆するが明らかな角化に至らない状態。例:脂漏性角化症、毛包系腫瘍。

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【えい】

HE(えいちいー)染色hematoxylin-eosin stain → ヘマトキシリン・エオシン染色

【えき】

液状変性liquefaction degeneration:基底細胞の浮腫、破壊に基づく基底層の変性。炎症性疾患で定型像をみるが、日光角化症、悪性黒子のような腫瘍性病変でも類似の組織像を示すことがある。高度になると水疱をつくる。基底細胞内あるいは基底膜直下に細胞の浮腫にもとづく小滴状空胞が出現するため、空胞変性hydropic degeneration of basal cellsともいう。例:多形滲出性紅斑、固定薬疹、扁平苔癬、エリテマトーデス。同義語:空胞変性。

【えく】

エクリン汗腺eccrine sweat gland:分泌部はコイル状の上皮細胞の集塊で腺腔面には暗調細胞(粘液細胞)とグリコーゲンに富む澄明細胞(明調細胞、漿液細胞)の2種類の細胞があり、これを外側から筋上皮細胞が取り囲む。分泌部に分布する毛細血管は有窓血管である。

【えっ】

X線微小分析X-ray microanalysis → 分析電子顕微鏡

【えし】

壊死necrosis:組織、細胞が致命的な損傷を受けて変性、壊死を生じる。HE染色標本では好酸性均質物質となる。例:結核の乾酪壊死。関連語:類壊死、角化。対比語:アポ(プ)トーシス。

【えし】

壊死性血管炎leukocytoclastic vasculitis :血管周囲への多核白血球の浸潤、多核白血球の破砕で生じた核塵の出現。加えて、赤血球の漏出を伴う。血管全体が好酸性に染まるが、血管壁への炎症性細胞浸潤、血管壁へのフィブリンの沈着(フィブリノイド壊死)がある。例:アナフィラクトイド紫斑。類義語:アレルギー性血管炎。

【えら】

エラスチカ・ヴァン・ギーソン染色elastica van Gieson stain:染色法の一つ。弾性線維は黒褐色、膠原線維は赤染し、筋線維は黄色となる。

【えん】

円形体corps ronds:マルピギー層で細胞が個々に角化したとき、細胞間の接着が離れて周囲の細胞とは区別され、好酸性の胞体をもつ円形物質として観察される。角層では顆粒体となる。例:ダリエー病。

【えん】

炎症性細胞浸潤inflammatory cell infiltration:リンパ球、組織球、ときに好酸球を混じた細胞浸潤。高度dense、中等度mild 、軽度slightly、びまん性diffuse、斑状patchy、稠密massive 、一様monomorphous、多様polymorphousを区別する。血管周囲に密に浸潤するときには血管周囲性細胞浸潤があるという。とくに境界が明瞭で斑状の浸潤はコートスリーブ様細胞浸潤coat-sleeve like cell infiltrationという。好酸球、形質細胞、あるいは好中球の目立つ場合は付記して注意を喚起する。例:遠心性環状紅斑、寄生虫症、扁平コンジローマ。類義語:血管周囲性細胞浸潤。対比語:小円形細胞腫瘍。

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【おい】

オイルレッドO法oil red O satin → 脂質

【おう】

黄色腫細胞xanthoma cell → 泡沫細胞

【おた】

オタマジャクシ状tadpole appearance:管腔構造の一部が嚢腫状に膨れてみえる様。膨隆した部分には胎生期に観察されるエクリン汗腺芽のような管腔形成初期の像が観察される。例:汗管腫。同義語:コンマ状。

【おて】

お手玉様細胞bean-bag cell:細胞貪食組織球性脂肪織炎(皮下脂肪織炎様T細胞リンパ腫)に定型像をみる。マクロファージが赤血球を貪食するため胞体内に多数の変性赤血球を含んでいてお手玉様にみえる。援用し、白血球を含む場合にも使用される。関連語:赤血球貪食像。

【おび】

帯状細胞浸潤band-like cell infiltration:リンパ球、組織球、形質細胞などが真皮乳頭層から乳頭下血管叢周囲に帯状に分布する様。下縁が比較的境界明瞭である。苔癬様反応に定型像をみる。例:扁平苔癬、硬化性萎縮性苔癬、日光角化症、ボーエン病、菌状息肉症。

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