5. 第16回韓国皮膚病理学会に参加して (大原國章先生 平成29年5月)

2017.05.23

国際交流

 5月20日、ソウル市における表記学会で、公式な日韓交流の歴史的な第一歩として日本側から、特別講演1題、CPC3題、症例報告2題が提出されました。鳥取大学、杉田和成先生のCutaneous Lymphoma : Overview and Perspective of the Histopathology and Immunologyは正常リンパ球の発生・分化から説き起こし、その免疫異常のsiteによる多様な表現型を、わかりやすく明快に解き明かしていて、聴衆の反応も好評でした。CPCでは日本医大・武蔵小杉の百瀬葉子先生がnecrobiosis lipoidica,信州大学の皆川茜先生がPigmented Spitz, 近畿大学の柳原茂人先生が新生児の拇指に発生したPacifier (おしゃぶり)noduleを発表されました。Ncrobiosisではepithelioid  cell granulomaの病理的鑑別が討論され、Spitz については悪性黒色腫との鑑別が話題になり、Pacifierについてはその特異な臨床形態が聴衆の興味をそそっていました。症例報告では大原がdesmoplastic melanoma of the nail ,vascular leiomyosarcomaを提出しました。Melanomaでは切除範囲と局所再発の有無についての質問がありましたが、後ほど改めてフロアーでの会話では旧知のChonnam National UnivのYun教授、YeungnamUnivのProf Shin(韓国皮膚病理学会、理事長、6月の学会でのinternational sessionの座長)も爪のdesmoplastic melanomaの経験があるとのことで意見を交換できました。Leiomyosarcomaについては、診断に異論はなく、鑑別として挙げたSchwannomaの治療適応、後遺症が議論されました。

 学会はKorea Universityの構内で開かれ、大学の解剖学教室の実習室を借りて、午前中に90枚の教育用標本を1分刻みで鏡検するというプログラムで始まり、午後から教育講演、CPC8題、症例報告10題が発表され、口演は韓国語でされた例が多かったですが、スライドがすべて英語表記だったので理解に不自由さは感じないで済みましたし、我々も討論に参加できました。CPCの座長はソウル大学のCho 教授と大原が担当しました。

 学会前日の夜には、韓国風のフグをご馳走になり、学会終了後はしゃれたイタリアンでの会食を楽しみました。しかし、せっかく韓国に来たのだからという趣旨で、大原の先導で路地裏の焼き肉食堂におもむき、愛想のよいオモニ(お母さん)に肉を切り分けてもらい、全員で民間外交も果たして帰路につきました。

 今回の“遠征”により日韓の交流の新しい地平線が開かれたと確信できましたし、今後のさらなる発展が期待されます。

(文:大原國章)

当日のプログラムの表紙

Korea Univ 学会場の前で勢ぞろい

実習風景。炎症、感染症から腫瘍まで幅広い内容の標本が用意されていた。

発表が済んで私的な慰労会

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