2. 皮膚病理道場あどばんすと2013参加記

2014.04.15

過去の活動

高井利浩 先生
兵庫県立がんセンター皮膚科

 兵庫県立がんセンター皮膚科、高井と申します。去年の話となりましたが、2013年の皮膚病理道場あどばんすとに受講生として参加しましたので、振り返りつつ感想など書き留めてみます。駄文ですがお付き合いくだされば幸いです。

 売り文句にもある様に、少人数を対象として中級的な内容のレクチャー、質疑応答というこれまでなかった内容という事でしたので、平日金曜日の日中という日程でしたが何とか業務をやり繰りして(他のスタッフに頼んだだけですが)、参加申込を送り、無事に受講できる事になりました。

 会場は日本医大の校舎の地下の一室で、講堂というよりは会議室と呼びたい様なこぢんまりとした部屋でした。開始の半時間ほど前に会場入りしましたが、既に講師の先生方と、何人かの受講者がスタンバイされており、既に熱気を感じたのは、決して7月の炎天下だからというだけではなかったと思います。持参のノートPCに資料のファイルを取り込み、軽く眺めたり、顔見知りの参加者と挨拶したりするうちにスタートとなりました。

 山元先生のご挨拶に続き、今回レクチャー担当の石河先生、安齋先生、そして講師の先生方の自己紹介。この短い挨拶の時点でどの先生も熱い皮膚病理愛をお持ちのことがヒシヒシ伝わって来て、既に会場の空気はイイ感じに温まり、かつほぐれてきます。受講者は十数人で、講師の先生方との距離感も近かったです。

 レクチャーでは総論的事項だけでなく、実際の症例を提示して鑑別のポイントになる所見、見誤ってはいけない所見や、所見を裏付ける分子生物学的な知見との相関などにまで突っ込んで紹介されます。更に引き続いて、実際の症例のバーチャルスライドを各自検討する検鏡タイム。この時間は、講師の面々に直接質問をぶつけ放題教わり放題という出血大サービスぶりです。受講者は各々、教わったばかりの内容を踏まえつつ、資料を見返したりしながら標本を検討し、どんどん質問をします。講師の先生が一瞬答えに窮する様な鋭い質問を飛ばす受講者もいて(私ではありません)、その場でディスカッションが展開する事もありました。実際の標本を前にしてエキスパートの先生に何でも聞けるというのは、素晴らしいシチュエーションです。私も普段から疑問に感じている事や資料で整理しきれていない部分を思う存分質問させていただきました。講師陣も非常に気さくな先生ばかりで、失礼にもテーマと全く無関係な疾患の病理のことも実は教えていただいたりしました。

 このように書くと、何だかえらくオタクな内容のように思えるかもしれませんが、決してそうではなく、あくまで日常よく出会うが時に鑑別が難しい、あるいは概念のややこしい疾患、腫瘍が対象で、その鑑別や類縁疾患について深く掘り下げて、色々な角度から考え学び、知識を増やし整理するという意味です。聞いたこともないような病気が次々出てきて目が回るようなのを想像しないで下さい、と念を押しておきます。

 そして、この講座の内容、教育内容自体にもちろん感激したのですが、私は、皮膚病理をこんなに熱く、深く語りあえる先輩、同志が日本中に沢山居る事、そしてそういう先生が(全員では勿論ないにせよ)こうやって地下の講義室に集い、濃密にディスカッションしているという状況にも、結構胸が熱くなりました。やはり自分の施設や近隣地域の研究会では、病理のことを掘り下げて力をこめて話したり疑問点を提示しても、あまり興味なさそうな反応をされたり、「マニアックだねぇ・・」的な反応が帰ってくることも割とありまして、まさに、今回のような機会を夢見ていたのかも知れません。

 とは言っても、別に秘密結社のような会が良い、と言っているわけではありません。少数のマニアだけが狭い世界で何かやってる、というのは科学の領域としては全く不健康です。やはり裾野を広げてどんどん新しい人が入ってくることこそが発展のための大原則でしょうし、そういった場として総会での実践!皮膚病理道場などが開催されているのだと思います。そしてその次に、裾野から入った人を登山道に誘い、引き上げ、山の中腹からの景色を一緒に眺めて感嘆し、ともに頂上に向かおうと導く、後押しをするというのが、この道場あどばんすとという場なのかなあ、と感じました。

 この道場あどばんすと、2014年も開催されますし、恐らくそれ以降も続いていくだろう(いってほしい)と思います。先に述べたように、何も近寄りがたい程のマニアックな内容というわけではありませんし、むしろ翌日からの診断治療に非常に役立つポイントを惜しみなくレクチャーいただけます。質問はし放題。そして、講師陣、参加者での打ち上げもついて、何と参加は無料、正にもってけドロボー!です。

 こんな講習会、他にありますでしょうか?(あったら御免なさい)

 興味をお持ちになったら、是非参加を検討されることをお勧め致します。

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