3.汗孔癌診断の落とし穴
2012.12.01
トピックス
安齋眞一(日本医大武蔵小杉病院皮膚科)
汗孔癌(Porocarcinoma)とは、良性腫瘍である汗孔腫(Poroma)を良性のcounterpartとする悪性腫瘍であり、その予後は、有棘細胞癌よりも悪いとされています。
汗孔腫とは、汗管を構成する細胞で、外側の小型の核を持つ細胞質の乏しい基底細胞様細胞 である孔細胞(Poroid cell)と汗管の内側で、管腔を形成する好酸性の豊富な細胞質をもつ有棘細胞様細胞である小皮縁/クチクラ細胞(Cuticular cell)が、結節状に増加する良性腫瘍であり、腫瘍が表皮と連続して真皮内に索状に伸びて吻合増生し、腫瘍細胞周囲に正常角化細胞をともなわない部位がある、というものです。そのため、汗孔癌の病理組織診断のためには、
1)基底細胞様細胞の中に有棘細胞様細胞が混在することのある腫瘍との鑑別、2)管腔様構築が壊死や棘融解、間質へのムチン(粘液)の貯留では無いことの証明、3)正常の汗管上皮内への腫瘍細胞の進展ではないことの証明、の3つが必要になります。
また、汗孔癌は、しばしば良性の汗孔腫内に病変を形成することがありますが、汗孔腫においても小皮縁/クチクラ細胞に核異型性を生じることがあり、その鑑別も重要になります。皆さんも以下の文献を参考に、厳密な病理診断を行って下さい。
文献
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山元修、安齋眞一:汗孔癌の病理組織学的診断の落とし穴.皮膚科臨床アセット 9 エキスパートに学ぶ皮膚病理診断学 古江増隆、山元修編 中山書店 東京 2012:416-419.
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高山良子、安齋眞一、新見やよい、上野孝、二神綾子、川名誠司:Porocarcinomaと病理学的に鑑別が問題となった皮膚原発性上皮性悪性腫瘍の5例.西日皮膚 72:467-472,2010.
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伊東慶悟、安齋眞一、木村鉄宣:Poroid cell neoplasms 421例の臨床病理学的検討:第4報:病理組織学的随伴所見.日皮会誌 119:173-182, 2009.
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