5. 腎性全身性線維症の病理診断における鉄染色の有用性

2013.04.01

トピックス

石河 晃(東邦大皮膚科)

 腎性全身性線維症(Nephrogenic systemic fibrosis; NSF)は腎不全患者さんに生じる四肢、体幹の皮膚の肥厚、硬化、関節拘縮、肺・肝臓・筋・心臓などの多臓器が侵される全身性疾患で、おもにMRI造影剤であるガドリニウムを使用した際に発症する致死率30%といわれる重篤な疾患である。皮膚症状は全身性強皮症、硬化性粘液水腫、限局性強皮症、抗酸旧姓筋膜件、慢性GVHDなどに類似する。皮膚生検は真皮の膠原線維の増生と皮下脂肪小葉隔壁の膠原線維束の肥厚の所見を呈するが、NSFに特異的な所見といえるものはなかった。免疫染色では真皮内で増殖している紡錘形細胞でCD34とprocollagen-Iが陽性となることが示されており、創傷治癒過程で出現するcirculating fibrocyte由来であろうと考えられるようになったが、他疾患との鑑別に免疫染色は有用でなかった。今回、日本人症例9例の皮膚生検組織を渉猟し、鉄染色を施行したところ、6例で陽性となり、硬化性粘液水腫や強皮症では陰性となることが示された。希土類元素であるガドリニウムはキレートされた状態で安定化し、毒性が失われ、造影剤として用いられるが、鉄がガドリニウムと入れ替わってキレートされ組織に沈着し、代わって遊離したガドリニウムが組織の硬化を来すことが考えられた。

 腎不全患者にガドリニウム造影剤が使われることがほとんど無くなり、ガドリニウムによる新規発症は無くなると思われるが、ガドリニウムと関連が不明なNSFもあるため、皮膚科医、病理医にとっては重要な知見と思われる。(2013年 4月アップ)

* 文献:Miyamoto J, et al: Detection of iron deposition in dermal fibrocytes is a useful tool for histologic diagnosis of nephrogenic systemic fibrosis. Am J Dermatopathol 33:271-276, 2011

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